音のブログ

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そもそもギャオスは超音波を出せるのか?

ガ~メラ~、ガ~メラ~、強いぞガメラ強いぞガメラ強いぞガ~メ~ラ~

 

オニヤンマに指を噛まれて血が出たことがあります、ハナオです。

 

いきなり世代バレバレの「 ガメラマーチ 」からスタートしました、今回取り上げるテーマは昭和ガメラシリーズに登場したギャオスについてです。

 

超音波怪獣の名を冠するだけに音のブログとしても俎上に載せないわけにはまいらぬ対象ですが、ギャオスの固有技「 超音波メス 」が武器として通用しそうもないことは、柳田理科雄さんが著書「 空想科学読本1 」( メディアファクトリー )で検証されています。

 

なのでここでは武器云々の前段階の「 そもそもギャオスは超音波を出せるのか? 」を考察してみたいと思います。

 

平成版ギャオスの方はまた機会を改めまして取り上げますね

 

 

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「 超音波怪獣ギャオス 」 

生物が超音波を出す仕組み

実在の生物では、コウモリやイルカが超音波を効果的に用いていることで知られています。

 

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両者の音を生み出す方法は異なりますが、コウモリの方は空気によって声帯を震わせて超音波を作り、それを鼻や口から発しています。

 

つまり、広義的にはコウモリの超音波イコール声と申してもよろしいかと存じます。

 

ギャオスのモチーフはコウモリですから、この怪獣も同じシステムで声を変換させていると考えれば、超音波を発することができても別に不思議ではありません。

 

ところがどっこい、映画「 大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス 」の中で、動物学が専門と思われる青木博士はこう言います。

 

「 推察だがギャオスの背骨は二つに分かれており、それを音叉のように共鳴させて数百万サイクルの超音波を生み出している 」

 

えええっ、使っているのは声帯ではなくて骨ですか!?

 

映像を見る限り、緊迫する現場を和ませようと冗談を言っている感じでもなさそうですし、せっかくなので思い切りツッコんで揚げ足を取らせていただきます。

 

 

超音波の定義と音叉の仕組み

まず、超音波とは一体なんなのか?

 

生物が自分の耳で直接確認できる音の周波数の範囲は決まっていまして、これを可聴音と言います。

 

人間の可聴周波数は20~20000Hzで、超音波とは読んで字のごとく可聴域の高い方の上限を超え耳で聞くことができない音のことです。

 

コウモリが発する超音波は30000~120000Hzで、なるほどこれを聴くのは人間には無理ですね。

 

青木博士が劇中で用いた単位「サイクル」はHz( ヘルツ )と同意語ですから、ギャオスはコウモリの数十倍の周波数の超音波を発していると博士は考えたわけです。

 

 

次に音叉についての説明ですが、外観はご存じのとおりU字に曲げた金属棒の中心に脚がついたものです。

 

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U字部分を叩いたりぶつけたして金属全体に起きる振動を、脚に取り付けた箱や他の物体に接触させるなどして共鳴・増幅させる音響部品です。

 

青木博士の考えたイラストでは、ギャオスの脊椎は胸のあたりから首を割り頭に向かって二つに分かれ、その上端で頭蓋骨を支える構造になっていました。

 

音叉の先端がU字型で二つに分かれているのは、ざっくり言うと音の波長を安定させる( 条件に由らず常に一定の音程を鳴らす )ためです。

 

波長を安定させるためにはU字二股部分の長さが均一なことが条件で、裏を返せば脚部分が分岐箇所の中心にさえあればU字型にこだわる必要はありません。

 

現行で出回っているほとんどの音叉がU字型に曲がっているのは、取り回しを楽にするためが主たる理由です。

 

昔は一文字型の音叉もあったそうです

 

  

そしてもうひとつ大切なのは音叉のU字部分の先端がフリーになっている点です。

 

解放してあるからこそ振動が生じ、それが音叉全体に伝わり、更に共鳴が空気に伝わって音が増幅します。

 

鳴っている音叉は、U字部を指でつかんだり他のものに押し当てたりして音を止めます。

 

つまり二つに分かれた両方の先端が頭蓋骨につながっているギャオスの脊椎は、構造上振動させるのはほぼ不可能です。

 

 

それ以前に脊椎の中には神経の束があり髄膜と髄液に満たされ、外側も脊柱で覆われていますので、どっちにしても最初から振動なんかするはずもない!

 

もっと初歩的な事実を指摘するなら、どんな音叉も振動部は一種類の金属によるソリッド構造になっています。

 

二種類以上の違う材質をくっつけて音叉を作り上げたとしても異種材同士の振動数の違いから音はすぐに打ち消されてしまいます。

 

 

ところで動物の脊椎はいくつもの椎骨と呼ばれる骨が連結してできています。

 

それぞれの椎骨はお馴染みの椎間板で連結されクッションの役割も果たしています。

 

説明は途中ですが、もうおわかりですよね?

 

 

細かく検証すればするほど、脊椎が音叉の代用品には向かない立証が積み重なっていきます。

 

生物学の権威ゆえ音響化学は門外漢で不勉強なのかもしれませんが、それにしてもハナオみたいな素人に簡単に論破されるなんて青木博士情けなさすぎですって。

 

青木理論に救いの手を

では、専門の生物学でとんでも理論をぶちかましてしまった青木先生の名誉回復のため、多少強引でも背骨二つ構造と超音波の発声を結び付けられないでしょうか?

 

 

そういえば映画ではこんなシーンもありました。

 

青木博士から首の骨が二本に分かれている説を聞いた、本郷功次郎演じる主人公の堤志郎の発言 ↓

 

「 それでギャオスの首はほとんど回らないのではありませんか? 」

 

二本の首の骨が邪魔になってギャオスは横を向けないというわけです。

 

なるほど、これは説得力がある。

 

実際に劇中でギャオスの顔は、ずっと前向きで固定されていたし。

 

すると少なくとも生物学上では青木博士の見解は肯定できそうですが、ではなにゆえギャオスは首の骨を二本も持っているのか?

 

突然変異でもない限りはギャオスだって進化の過程でこういう生体構造に達したわけだろうし、横向くメリットを放棄してまで得たかったアドバンテージとはなにか?

 

……やっぱり超音波を出すためかな~。

 

エサを得るために飛行機を撃ち落としたり、山に火を点けた亀の怪獣を追い払ったり、実際かなり役にたっていたものな~~。

 

超音波は空気の振動からでも発生させられますが、声帯に頼るやり方の方が簡単ですし、より高い周波数の音が出せるでしょう。

 

ギャオスって地声もかなりやかましい怪獣でしたしね。

 

イルカもコウモリも超音波はエコーロケーション(反響定位)のためにしか用いず、頭に血管が浮かぶくらい気合入れて頑張ったところで破壊や殺傷能力を得ることは不可能と思われます。

 

すると常識はずれの数百万サイクルの超音波を発するギャオスの喉には想像を絶する負担がかかるかも!

 

あ、わかった、首の骨が二本あるのは補強のためだ。

 

それと頭がブレないおかげで指向性が高まり、より超音波の命中率がアップする相乗効果も期待できます。

 

 

 

結論、ギャオスは超音波を出すことはできますが、発声源はあくまで声帯であって、首の骨が二本に分かれているのは二次的な補強のためである。

 

合っているのかこの理論?

 

柳田理科雄さんに検証してもらえないかなぁ……。

 

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今回も最後までお読みいただきありがとうございました。