いきなりですが、今回は愚痴です。
ハナオが若かりし頃に活動していたバンドのボーカル・亜里沙(本名・だってアタシのこと書くときは偽名や仮名は使うなって言うんだもの)の話です。
亜里沙は、写真でご紹介できないのが本当に残念なほどの超絶美女!
例えるなら、オーラもケバさも露出度も3倍になったまいやん=白石麻衣さん( ご卒業おめでとうございます……あ、まだか )といったところ。
街を歩けばすれ違う男性が10人いれば30人振り返ると自称するほどの、ギラギラした美貌を放っていました。
目立つことがだ~い好き、飲むは踊るは走り回るはのスーパーアクティブガールで、歌もめちゃめちゃ上手い。
一緒にカラオケに行った際ベタ褒めしたら、誘ってもいないのに当時ボーカルが抜けて困っていたハナオのバンドにズケズケと入り込んできました。
歌も色気もパフォーマンスも百点満点で文句の付けどころが無かった反面、性格と行動はこちらの常識の範疇からは大きく逸脱し、おかげでバンドメンバーは上下左右縦横斜めに振り回されまくっておりました。
特にメンバーの心をえぐったのが亜里沙語録と呼ばれた、バンド活動に於けるNGワードのオンパレード。
参入当初はノボせていたメンバーが徐々に冷めていく様、結果バンドが解散に追い込まれてしまった過程を暴言ごとに紹介していきます。
事実は小説より奇なり、これから書くことはすべて事実ですので、現在バンド活動中もしくはこれからバンド活動をはじめる方に、少しでも参考になれば幸いです。
美女ボーカル語録によるバンド解散までの7つのステップ
ステップ1「 完全プロ指向 」
亜里沙が参加して最初のバンド練習のときに放った、あいさつ代りのミサイル攻撃。
「 アタシ、ハンパなことは嫌いなの。完全プロ指向でいくから。 」
想像に難くないと思いますが、バンドメンバー全員ドン引きでした。
でも、歌唱力のあるボーカルが来てくれたことは歓迎ですし、とにかくとんでもない美人且つみんな魔法にかかりたてでしたから、すぐにヘラヘラ言うことを聞いていました。
ちなみにギター・ベース・キーボード・ドラムとも演奏技術はアマチュアとしてはトップクラス(ハナオ判定基準)、でも誰もプロの「 プ 」の字も口にすることは無かったです。
実際のところ、音楽でつながっている友人や知り合いは概算で350人くらいいますが、「 完全プロ指向 」宣言している人がおそらく描いているであろう“芸能会と携わりを持つ職業プロ”になれたのはたったの2人です。
その他に音楽を生業としているのは、楽器屋の店員さんとか、音楽教室の講師、イベントプロデューサー、アフィリエイターなどで十数人といったところ。
つまり、プロを目指すのは自由ですが、尋常ならざる努力と裏付けを持たないと単なる世迷言になってしまうわけです。
そのあたりはメンバー全員、しっかり認識していたはずなんですけどね~……。
なぜあのとき彼女に思うがままに操られてしまったのか?
ま、今となっては良い思い出ですが(笑)
ステップ2「 今日は下りてこない 」
演奏組にはよくわからなかったのですが、亜里沙いわく日による歌唱ムラは天地ほど差が出るらしく、低調な日は顔に険しさがにじむので、こちらの方はひとめでわかりました。
不機嫌な顔しててもやっぱり美人で、まぁそれはそれで良かったりしましたが……。
ある日の練習で、亜里沙が何度も途中で歌を勝手にやめてしまうことがありました。
今までは調子が悪くても一応最後まで歌い切っていたのに、どうしたんだろう?
顔色もいつもより冴えないし具合でも悪いのかな?
ひょっとして“あの日”かな?
心配するメンバーの視線を浴びていた彼女は、意を決したように言葉を発しました。
「 ダメだ、今日は下りてこない、もう終わりにしよ! 」
呆然とたたずむ我らを尻目に、まだ半分以上時間が残っているレンタルスタジオから、亜里沙はスタスタと出ていったのでした。
ステップ3「 作詞くらいならできるよ 」
“完全プロ指向”亜里沙嬢の強い希望により、バンドはオリジナルの歌ものへとシフトチェンジをしていました。
オリジナルソングは、メロディメーカーとして才のあるギタリストが作曲をおこない、編曲・楽譜起こし・デモテープ作りはハナオが担当、前身のフュージョンバンドでもこなした役割でしたので、ここまでは楽勝でした。
厄介だったのがそれまで誰も手掛けてこなかった作詞で、ギタリストが作曲しながら書いたものをハナオが添削する形でなんとか様にしていました。
この当時、作詞力を身に着けようと猛勉強したことがのちに生きてきましたから、そこだけは亜里沙に感謝です。
そういえば、必死に考えた詞に彼女が文句をつけてきたことは一度も無かったなぁ……。
とはいえ、早くライブがやりたいからレパートリーを増やせとせっついてくる誰かさんのせいで、コンポーザーチームのストレスはどんどんたまっていきました。
限界間近を察したハナオとギタリストは、おそるおそる女王様にその旨をお知らせすると、彼女の口から信じられないお言葉が。
「 だったら手伝ってやるよ。作詞くらいならできるよ。 」
このお言葉には続きがあります。
「 A(超有名なシンガーソング歌姫)程度の詞なら、アタシにだって書ける。 」
女王様ご乱心! でも上から目線もここまでくると立派。
実際に詞も書いていただきましたが、ギタリストとハナオで大幅に修正が必要と判断したためお蔵入りといたしました。
ステップ4「 グルーブが大事でしょ 」
絶対に地球はアタシを中心に回っていると信じ込んでいた亜里沙嬢は、自分大好き。
というか自分以外に興味は無くて、練習中でもミーティングの最中でも、携帯を取り出してはパチパチと自撮りばかりしていました。
あるとき、曲間で演奏についてメンバーが相談していますと、そんなのは知ったこっちゃないわと、いつものように美貌の笑顔撮影に夢中の亜里沙ちゃん。
さすがにムッとしたのかドラマーが「 おい! 」と声をかけると彼女がひとこと。
「 グルーブが大事でしょ 」
一瞬空気が裂けるのが見えた気がします。
ドラマーはスティックを床に叩きつけて大激怒。
荒れ狂う大魔神を残りのメンバーでなだめるが大変でした。
この日なんとか練習を再開できたのが、今考えると不思議なくらいです。
トラウマになってしまったハナオはそれ以来、「 グルーブ 」って言葉を耳にすると、条件反射で気が重くなります。
ステップ5「 結局ベースって何やってるの? 」
グルーブ事件からさほど時間が経っていない日に、ハナオが亜里沙から喰らったキラーフレーズ。
「 結局ベースって何やってるの? 」
ベーシスト諸氏にとっては、言われたら嫌だな~と、密かにビクついている即死呪文ザラキでもあります。
怒髪天を突いたドラマーとは異なり、気の弱いハナオは彼女に何も言えずただただ落ち込んでおりました。
でも少しは気にしてくれたのか、その後の練習では一応ベースの音を耳で拾おうとしている様子も伺え、根は悪い子ではないんだなと思ったものです。
なお、同件は自虐的にアレンジして別記事にも書きましたので、よかったらお読みください。
ステップ6「 ……おはよ…… 」
なんとか漕ぎつけた新生バンドの初ライブは、元からの(少数の)バンドファンと亜里沙の取り巻きの(大勢の)親衛隊のおかげで大盛況となりました。
ところが、我がバンドメンバーは内心どうにもスッキリしませんでした。
それは、超絶美貌の実力派ボーカリスト亜里沙姫の毒舌に撃たれ続け蓄積したダメージと、もうひとつ大きな欠点のせいです。
亜里沙は、とんでもなく時間にルーズだったのです。
とにかく、バンド練習開始時間前にスタジオにいたことはほとんど無く、5分10分は当たり前、30分くらい遅れてくることさえザラにありました。
そしてある日のこと。
練習開始時間になり、いつものように器楽パートのみで演奏を開始、ボーカル姫の登場をお待ちしておりました。
5分経過……10分が過ぎ……30分経ってもワガママ姫は姿を現しません。
前日も音を合わせていて、「 じゃ、また明日。 」と言いながら颯爽とアウディでお帰りあそばされたので、練習を忘れていることは無いでしょう。
そろそろ1時間の遅刻、ひょっとして途中事故にでも遭ったのか?
さすがにメンバーも心配になり、怒るので普段はかけない彼女の携帯に連絡をとってみようかと話しだしたとき、ヌルッとスタジオに入ってきたプリンセス亜里沙。
不機嫌そうに準備をはじめる彼女をただ固まって見つめるお城の兵隊たち。
下々の視線に気づいた亜里沙はやっとメンバーの顔を見渡して、そして重い口を開きました。
「 ……おはよ……。 」
午前11時になに言ってんだ? もっと他に言うことあるだろ!(←もちろん心の声)
結局、彼女が大胆に遅延した理由などもう誰もたずねる気力も無く、この練習後に開かれたボーカル抜きの緊急ミーティングの議題はお察しのとおりです。
ステップ7「 いいんじゃない、別に 」
緊急ミーティングの末、もうこれ以上は彼女と一緒のバンド活動は無理、の結論に達したメンバーたち。
解散することになりました。
表向きは解散でも、本当の目的はやりたい放題かき回してくださった魔女ボーカルのクビです。
亜里沙だってそれはわかったはずで、おそるおそる解散のお伺いをたてたメンバーに対して、鬼をも竦む凄い目で睨み渡した後におっしゃった言葉が、「 いいんじゃない、別に 」でした。
最期まで亜里沙スタイルを崩さない彼女らしい言葉でしたが、ハナオも他のメンバーも実は寂しがっていたのは後でわかりました。
追加エピソード:亜里沙その後
一緒のバンド活動は短い期間でしたが、彼女とはその後も友人としてつきあって……じゃない、おつきあいさせていただいております。
ただ、高飛車な暴言連発と遅刻癖は治ることもなく、そのせいかいくつものバンドを短期に転々とし、今もその輝く美貌と高い歌唱力を武器にプロシンガーを目指して活動中です。
ブレることが無い信念だけは素晴らしい!尊敬します。
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なお、この記事はアップ前に亜里沙様にご覧いただき承認を頂戴しております。
お叱りのひとつもあるかと構えておりましたが、バンド時代のこちらの作詞と同じく一切文句もありませんでした。
改めてブレ無いってことは素晴らしい!
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。