前回の記事「 音楽初心者でもわかる長調と短調の違い徹底解説( 5 ) 」からの続きです。
「長調」「短調」の曲をいろいろな伴奏バージョンで聞き比べると
主旋律のみ伴奏無しの場合
前回はいくつかの曲で、「 長音階 」を使った「 長調 」バージョンと、「 短音階 」を使った「 短調 」バージョンをそれぞれ聴き比べていただきました。
そのときに下の注釈を書いていますが……
ただし、今回は伴奏は無しでメロディのみです。
余計な音に惑わされずにメロディを単音で追うためと、あともうひとつ“別の理由”があるのですけどそれは後述します。
これから、この“別の理由”についての説明をいたします。
あ、それと、今まで「 メロディ 」と呼んでいたパートは、以降「 主旋律( 歌メロ ) 」と表記しますね。
まずは、「 クラリネットをこわしちゃった 」の「 長調 」と「 短調 」バージョンをお聴きください。
同曲の3番冒頭の、
ドとレとミとファとソとラとシの音が出ない
訳:石井好子
この部分で、アレンジにも手を加え2拍子( 原曲 )を4拍子に直しドラム演奏をプラスしました。
「 クラリネットをこわしちゃった 」長調バージョン
「 クラリネットをこわしちゃった 」短調バージョン
主旋律( 歌メロ )を楽譜に起こします。
「 クラリネットをこわしちゃった 」長調バージョン・主旋律( 歌メロ )楽譜
「 クラリネットをこわしちゃった 」短調バージョン・主旋律( 歌メロ )楽譜
これら2つの主旋律( 歌メロ )では、「 長調 」バージョンの青い音符と「 短調 」バージョンの赤い音符のみが異なっています。
青い「 ミ 」は「 長音階 」の音で、赤い「 ミ♭ 」は「 短音階 」の音です。
それ以外の音は両方の「 音階 」の共通音ですから、この「 ミ 」もしくは「 ミ♭ 」が出てくるまで「 長調 」か「 短調 」かの判別はできないわけです。
主旋律プラスピアノ伴奏ありの場合
今度は主旋律( 歌メロ )に、ピアノの伴奏を加えます。
各小節の頭に全音符で3つの音ををジャーンを鳴らすだけのセンスもへったくれも無いアレンジですが、わかりやすさ重視ということでご容赦願います。
「 長調 」と「 短調 」のバージョンを続けてお聴きください。
「 クラリネットをこわしちゃった 」長調・ピアノ伴奏バージョン
「 クラリネットをこわしちゃった 」短調・ピアノ伴奏バージョン
上の主旋律( 歌メロ )オンリーと比べて、曲が流れるとすぐに「 長調 」か「 短調 」か判別できますね。
なぜかというと、ピアノの伴奏が「 長調 」のときは「 長音階 」の音を、「 短調 」のときは「 短音階 」の音を鳴らしているからです。
「 クラリネットをこわしちゃった 」長調・ピアノ伴奏バージョン楽譜
「 クラリネットをこわしちゃった 」短調・ピアノ伴奏バージョン楽譜
ピアノも「 長音階 」の音は青く、「 短音階 」の音は赤くしました。
和音(コード)で長調か短調かを聴き分ける
主旋律( 歌メロ )のみの場合と違い、ピアノは3つの音を同時に鳴らしています。
このように複数( 2つ以上 )の音程( ピッチ )の異なる音が同時や続くフレーズとして鳴るものを「 和音 」と呼びます。
「 和音 」を音の並び方、つまり音の構成ごとに法則化して名称をつけたものが「 コード 」です。
「 和音 」と「 コード 」は広義で同意語と捉えて構いません。
さて、音楽初心者でもわかる長調と短調の違い徹底解説( 2 )で挙げた、「 長調 」と「 短調 」の3つの違いを覚えていますか?
1)曲調の違い
2)音階の違い
3)和音の違い
前回までで1)と2)をこなしてきまして、ここからいよいよ3)の和音の違いの説明に入ったわけです。
曲に用いている「 音階 」によって「 曲調 」が明るく感じたり暗く聞こえたりしますし、「 和音 」は「 音階 」に則って構成されています。
また「 音階 」が「 和音 」から導き出される場合もあります。
まぁ、難しいことは徐々にわかっていただくとして、先ほどの「 クラリネットをこわしちゃった 」の「 長調 」バージョンと「 短調 」バージョンの主旋律( 歌メロ )無し、つまりピアノ伴奏だけで聴いてみてください。
「 クラリネットをこわしちゃった 」長調・ピアノ伴奏のみ
「 クラリネットをこわしちゃった 」短調・ピアノ伴奏のみ
主旋律( 歌メロ )が無くても、ピアノの「 和音 」だけで十分「 長調 」か「 短調 」か判別できますよね。
「 長調 」「 短調 」の聴き分けに、いかに「 和音 」が重要かおわかりいただくために、いろいろな楽器とパターンの伴奏でアレンジしてまいります。
音源と楽譜をアップしましたので、耳で聴き目で確認してみてください。
ギター伴奏バージョン
「 クラリネットをこわしちゃった 」長調・ギター伴奏バージョン
「 クラリネットをこわしちゃった 」短調・ピアノ伴奏バージョン
「 クラリネットをこわしちゃった 」長調・ギター伴奏バージョン楽譜
「 クラリネットをこわしちゃった 」短調・ギター伴奏バージョン楽譜
ピアノの場合は主旋律( 歌メロ )の邪魔に鳴らないように音程の離れた低い音で「 和音 」を構成していましたが、ギターはハイポジションコード( 高めの音の和音 )をスタッカート( 短く音を切る )で裏拍に入れています。
ギターの方がピアノに比べて若干「 音階 」が拾いにくいアレンジにワザとしてあります。
繰り返し聴いて、主旋律( 歌メロ )とギター和音の響きから「 音階 」を感じ取ってください。
シンセ伴奏バージョン
「 クラリネットをこわしちゃった 」長調・シンセ伴奏バージョン
「 クラリネットをこわしちゃった 」短調・ギター伴奏バージョン
「 クラリネットをこわしちゃった 」長調・シンセ伴奏バージョン楽譜
「 クラリネットをこわしちゃった 」短調・シンセ伴奏バージョン楽譜
前の2つと違い、今度の伴奏は“和音では無く”、シンセサイザーでよくあるストリングストーン( 擦弦楽器のような音 )を単音で鳴らしてみました。
“和音では無く”と書きましたが、実はこれでも立派な和音です。
思い出してください、先ほど“複数( 2つ以上 )の音程( ピッチ )の異なる音が同時や続くフレーズとして鳴るものが「 和音 」”と説明しました。
歌開始の主旋律の音程が「 ド 」、伴奏のシンセの音程が長調では「 ミ 」、短調では「 ミ♭ 」。
音程が異なる2つの音が一緒に鳴っていますから、和音を奏でていることになります。
「 ド 」と「 ミ 」、「 ド 」と「 ミ♭ 」、これだけでも「 長音階 」の「 長調 」か、「 短音階 」の 「 短調 」かが判別できるのです。
ベース伴奏バージョン
「 クラリネットをこわしちゃった 」長調・ベース伴奏バージョン
「 クラリネットをこわしちゃった 」短調・ベース伴奏バージョン
「 クラリネットをこわしちゃった 」長調・ベース伴奏バージョン楽譜
「 クラリネットをこわしちゃった 」短調・ベース伴奏バージョン楽譜
ピアノ・ギター・シンセバージョンでは伴奏楽器による音数の違いはあっても同じ音程の音が鳴り続けていましたが、今度のベースはラインがじっとせずに動き回っています。
ベースアレンジは「 和音 」というよりも、主旋律( 歌メロ )と一緒に鳴っている別のフレーズと考える方が適切かもしれません。
主旋律( 歌メロ )と動くベース音の両方を一緒に聴いて音程をつかみ、そこから「 音階 」を判別するには慣れが必要です。
ただ、ベースも「 音階 」に則ってフレーズを奏でていますので、当然「 長音階 」と「 短音階 」では選ぶ音が違います。
楽譜の「 長音階 」と「 短音階 」で異なっている「 青 」と「 赤 」の色の音符を目で追いながらベースラインを聴いてみてください。
長調か短調かは伴奏を聞けばわかりやすい
前回の記事のサンプル曲のように主旋律( 歌メロ )のみの場合より、伴奏が付いた方が圧倒的に「 音階 」がわかりやすくなります。
「 音階 」がわかれば、その曲が「 長調 」なのか「 短調 」なのか判別できます。
ただし、敵もサルものひっかくもの、実際にいろいろな曲を聴いていくと、そうやすやすとは「 長調 」「 短調 」を明らかにしてはくれません。
次回からは、ケーススタディをこなしながら必要最小限の音楽理論を身に付け、サルの攻撃……じゃない、やすやすと明らかにしてくれないパターンを探ってまいりましょう。
最期に、今回の練習曲?「 クラリネットをこわしちゃった 」の全伴奏ありバージョンをアップします。
「 クラリネットをこわしちゃった 」長調・伴奏付き
「 クラリネットをこわしちゃった 」短調・伴奏付き
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長調と短調の違い徹底解説( 7 )に続きます。