「 音楽初心者でもわかる長調と短調の違い徹底解説( 4 ) 」からの続きです。
前回は、「 長音階 」と「 短音階 」のピッチの仕組みと、それぞれの「 音階 」内で半音違っているの“3つの音”のどちらを使っているかで「 長調 」の曲なのか「 短調 」の曲なのか判断できることを理論で述べました。
今回は、理論を押えたうえでの実践です。
ケーススタディをこなしていただきつつ説明で捕捉してまいります。
同じ曲を「 長音階 」と「 短音階 」で聴き分ける
では、これからいろいろな曲を聴いていただきます。
最初は原曲が流れ、次に原曲が「 長音階 」なら「 短音階 」に変えたもの、原曲が「 短音階 」なら「 長音階 」に変えたものを流します。
1曲ごとに解説をしてまいりますので、そちらをしっかり読んでください。
「 こぎつねこんこん 」
「 こぎつねこんこん 」長調( 長調音 )※原曲
実はドイツ民謡のおなじみ「 こぎつねこんこん 」です。
音楽初心者でもわかる長調と短調の違い徹底解説( 2 )と同じく、世代を問わず耳に馴染みが深く、旋律がわかりやすい曲を選んでまいります。
ただし、今回は伴奏は無しで主旋律のみです。
余計な音に惑わされずにメロディを単音で追うためと、あともうひとつ“別の理由”があるのですけどそれは後述します。
「 こぎつねこんこん 」の原曲は「 長音階 」を使った「 長調 」です。
聴いてわかりましたか?
「 短音階 」に直した「 短調 」バージョンで「 音階 」の違いを感じてみてください。
「 こぎつねこんこん 」( 短音階 )
まずは、「 音階 」の音ひとつひとつを拾おうとせずに、メロディの流れで何度も聴き比べてください。
明るい「 長調 」と、暗い「 短調 」。
それぞれのメロディがどう動いているのかを感じ取って~…………。
では次に「 長調 」と「 短調 」でどの音が違っているのか、楽譜でも確認してみます。
もう一度曲も下に並べましたので、楽譜の音符を目で追いながら曲を聴いてください。
「 こぎつねこんこん 」長調( 長調音 )
「 こぎつねこんこん 」短調( 短音階 )
もう音符を青や赤で染めたりはしませんが、どの音が異なっているのかはわかりますね?
「 短調 = 短音階 」のフラット( ♭ )が付いた1小節目3番目の「 ミ 」の音、3小節目11番目と4番目・4小節目1番目と4番目の「 ラ 」の音が、それぞれ「 長調 = 長音階 」の曲とはピッチが半音ずつ下がっています。
でも、前述のとおりあくまでも旋律の流れを自分の感性で聴き取りましょう。
「 赤い靴 」
次は原曲が「 短調 」の「 赤い靴 」を使ってみましょう。
まずは元曲のバージョンでお聴きください。
「 赤い靴 」短調( 短音階 )※原曲
次は「 長音階 」に直した「 長調 」バージョンの「 赤い靴 」をお聴きください。
「 赤い靴 」長調( 長音階 )
はい、曲調が明るくなりました。
両方のバージョンを楽譜で見比べつつ聴いていただければ更に理解は深まると思いますが、この記事の目的は楽譜起こしや楽譜を読むスキルの習得ではありません。
曲を聴くだけで「 長調 」か「 短調 」かを判別することでしたね。
ですから両方の音符を五線譜に並べての確認は、もういたしません。
前項「 こぎつねこんこん 」でもやったように、メロディの流れから音符の動きを感じ取ってください。
目に頼らず使うのは耳だけ、そしてメロディを聴きながら頭の中に楽譜を書いてみてください。
もちろん音符が正確にどの高さの音なのかはわからなくても構いませんし、楽譜は適当で結構です。
繰り返し「 赤い靴 」の「 短調 」バージョンと「 長調 」バージョンを聴き比べてください。
頭の中の楽譜でなんとなく引っかかってくる音がありませんか?
もしあったらシメたものです。
それが感じられたら第一段階は卒業です。
「 うさぎとかめ 」
「 うさぎとかめ 」長調( 長音階 )※原曲
♪もしもしかめよ~の「 うさぎとかめ 」です。
オリジナルの「 長調 」バージョンを聴いていただきました。
次は「 短音階 」を使った「 短調 」の「 うさぎとかめ 」です。
「 うさぎとかめ 」短調( 短音階 )
この曲のポイントは音符の割り、つまりメロディのリズムです。
タッカタッカ♪とハネるようなリズムですね、軽くてノリが良い……。
リズムに釣られてメロディの流れを見失うと、「 長音階 」「 短音階 」どちらのバージョンも「 長調 」だと勘違いするおそれがあります。
今回は「 長調 」と「 短調 」共に注釈付きで聴き比べていますから大丈夫だと思いますが、この手の曲ではリズムノリに騙されることが無いように注意して聴いてください。
「 さくらさくら 」
次は日本人なら知らなきゃモグリ、「 さくらさくら 」( さくら )です。
お琴を習っている人に「 なにか弾いて 」とお願いするとみんなこの曲を奏でますが、それもそのはず元々琴( 筝 )の練習用に作られた曲だからです。
いらぬトリビアはさておき、まずは原曲の「 短音階 」を使った「 短調 」バージョンと、「 長音階 」に変えた「 長調 」バージョンを続けて聴いてください。
「 さくらさくら 」短調( 短音階 )※原曲
「 さくらさくら 」長調( 長音階 )
さて、この「 さくらさくら 」ですが、「 短調 」「 長調 」いずれのバージョンも3小節2拍目までメロディが同じです。
つまり、その次の3小節3拍目の音を聞かないとどちらの「 音階 」を使っているのか判別できない曲なのです。
困りましたね~、んん、でもメロディが流れていくのをずっと待っていればいずれ「 長調 」か「 短調 」かわかるわけですし……。
では、もっと早く「 長調 」「 短調 」が判別できる良い方法は無いのかといいますと…………。
「 クラリネットをこわしちゃった 」
「 クラリネットをこわしちゃった 」バージョン1※原曲
はい、「 クラリネットをこわしちゃった 」を聴いていただきました。
さて、問題です、これ「 長調 」でしょうか?それとも「 短調 」でしょうか?
………………。
では、異なる音階を使ったバージョン2も聴いてください。
「 クラリネットをこわしちゃった 」バージョン2
もうおわかりでしょうが、バージョン1( 原曲 )が「 長調 」で、あとから聴いていただいたバージョン2が「 短調 」に変えたものです。
実はこの「 クラリネットをこわしちゃった 」も前曲の「 さくらさくら 」と同じく、出だしのメロディフレーズが「 長調 」も「 短調 」も途中まで一緒です。
「 クラリネットをこわしちゃった 」は2拍子なので、数えて2小節までは同じ旋律で、ですから3小節の1拍目の音が鳴るまではどちらの「 音階 」を使っているのか判別できません。
今回は曲開始部分からのメロディに特化して取り上げましたが、これらの例以外でも主旋律のみで「 長調 」か「 短調 」か判定するのが難しいケースは普通に見られます。
これが冒頭に書きました「 もうひとつの“別の理由” 」へのフリになります。
長調と短調の違い徹底解説( 6 )に続きます。